百怪百匣 うぶめ

乙酉平成十七年

木版單色摺り

446×300粍

ウブメ、産女、姑獲鳥
 お産で死んだ婦人の靈が化したものといふ。血に染まつた腰卷を纏ひ、子供を抱き、橋のたもとや四辻に現れる。通行人があると、子供を抱いてくれ、とせがむ。
 この子供を抱くと、子供と思つたら墓石に抱き附いてゐたり、抱いた子供がずんずん重くなり、持ちきれぬ程になる事もある。若し、重さに負けずにをれば、お禮として、怪力、寶刀などを授けて貰へるといふ昔話もある。
 九州地方では、妊婦が胎児と共に死亡した場合、腹を割いてでも必ず母體から胎児を取り出し、別離させて埋葬すべきだと言はれる。叶はぬ時は、赤子に見立てた藁人形を拵え、それを死んだ婦人と背中合はせに縛り附けて入棺すれば、うぶめにならないと信じられた。
 姑獲鳥とは中國の妖怪である。半女半鳥で、産婦が死んで鬼(幽靈)になつたものとされた。この事から、江戸時代、日本のうぶめと中國の姑獲鳥が同一視され、「うぶめ」に「姑獲鳥」の字を當てるやうになつた。
 『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大事典』では、人間のあかんぼうをさらい、そだてるのがしゅみ。とある。これは中國の姑獲鳥の性質である。おねしょをさせる力がある。は水木先生の粹な創作か。

參考
『妖怪図巻』京極夏彦:文 多田克巳:編、解説
『鳥山石燕 画図百鬼夜行』高田衛:監修 稲田篤信、田中直日:編
『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大事典』